2017年の春頃より銀行カードローン問題がクローズアップされるようになりました。2018年に入り、さらに規制が強化されています。
なぜ銀行カードローンが問題視されるようになったのか。そして銀行カードローン利用者にはどのような影響があるのか、銀行カードローンを検討されている方や銀行カードローンを今使っている方は気になるところです。
「銀行」という響きから安心感、信頼があると思いがちな銀行カードローンですが、具体的にどのような問題があったのでしょうか?
今回の記事では銀行カードローン自主規制が行われた理由や規制の内容を説明します。さらに銀行カードローン利用への影響などについても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
元信用金庫職員が銀行カードローンの規制と利用者への影響を分かりやすく解説!
銀行カードローン自主規制の背景
なぜ、銀行カードローンの自主規制が行われるようになったのでしょうか?その理由は「銀行カードローンの貸しすぎ」が問題になっていることに原因があります。
それでは、なぜ銀行カードローンが貸しすぎになってしまったのでしょう?むしろ「消費者金融のほうが貸しすぎなのではないか」と思われる方も多いのではないでしょうか。
たしかに、過去に消費者金融の貸しすぎが社会問題になったことがあります。しかし平成22年の「総量規制実施」により、消費者金融の貸付額は厳しく制限されました。その結果消費者金融業界は一気にしぼんでしまっています。
銀行カードローンの貸しすぎが社会問題化
銀行カードローン問題とは、銀行カードローンによる過剰貸し付け問題のことです。2016年末頃からマスコミで取り上げられ、社会問題となりました。
ここでは、具体的にどのような問題が起きたのかを見ていきます。
問題の原因の一つに、銀行カードローンの利用者が急激に拡大したことが挙げられます。金融庁銀行カードローン残高の推移を見ると、2010年は残高が3兆2554億円ですが、2017年には5兆8186億円で約80%増になっており、利用者が急拡大していることがわかります。
総量規制実施の時点で銀行カードローンは規制の適用外とされました。適用外とされたのは「銀行は消費者金融よりもキチンと審査を行うだろう」という金融庁の考えもあったと言われています。
ところが銀行は金融庁の思惑とはうらはらに「カードローン貸付競争」に走ってしまいました。「金利の低さ」や「総量規制対象外」などを武器に消費者金融もびっくりの高額貸付も見受けられるようになっていたのです。
銀行カードローンの利用者の急拡大した理由はいくつかあります。銀行自身がカードローンを大々的にアピールしたこと、消費者金融よりも低金利であること、「銀行」というブランドで運営するカードローンであるため、利用者にとっても安心材料になったこと等があります。
これに加えて、2010年に始まった消費者金融への貸付規制、総量規制が非常に大きく影響しました。銀行カードローンは、この規制の対象外だったからです。
さらに近年の銀行カードローンの審査は「保証会社への丸投げ」が当然のように行われていました。
万が一融資金が焦げ付いてしまっても、保証会社が肩代わりしてくれます。そのため銀行はほとんどリスクを負わずに貸出できてしまうことになるのです。
そのため保証会社が保証してくれるなら、銀行はろくに審査せずに融資していたというのが実態だったのです。
銀行カードローンは総量規制の対象外
「総量規制」とは貸金業者が健全な貸付を行うために、政府が定めた貸付に関する規定のことです。2010年に導入され、消費者金融や信販会社などが規制の対象となっています。
規制が強化される前は、消費者金融の高金利での過剰貸付により自己破産をする人や、執拗な取り立てのせいで自殺に追い込まれる人などが増え、深刻な社会問題となっていました。総量規制の導入により、それらの問題が解決の方向に進んでいきました。
一方、銀行は目的別ローンも扱い独自の審査ノウハウもあるため、カードローンにおける審査も適正に行われていると思われており、総量規制をかけられませんでした。ところが貸付けの規制がないのよいことに、銀行カードローンは1人当たりの融資額を拡大させていきました。
中には、年収の1/2、場合によっては年収と同額の貸付も行う銀行まで出てきました。もちろん銀行カードローンの審査が適切に行われていれば、問題はなかったでしょう。
ですが以下で述べるように、一部の銀行カードローンの審査はザルに近い状態でした。利用者の返済能力に見合っていない貸付は、自己破産者を増やす要因となり、カードローン問題を招いてしまったのです。
消費者金融が保証会社で銀行はノーリスク
銀行カードローンの保証会社が消費者金融である点も、問題を大きくした原因の一つです。保証会社とは債務者が返済不能になったとき、債務者の借入金を代わりに債権者に返済する(これを「代弁弁済」といいます)会社のことをいいます。
つまり、銀行カードローンの利用者が返済不能になった場合、保証会社である消費者金融が借入れを全額弁済してくれるため、銀行は貸し倒れのリスクゼロでカードローンを提供できるのです。もちろん銀行は保証会社(=消費者金融)に対して保証料を支払いましたが、それでも十分に採算が合いました。
さらにカードローンの審査業務を放棄し、審査を保証会社(つまり消費者金融)に丸投げする銀行まで出てきました。保証会社が審査を厳しくしようとすると、「保証会社を変えるぞ!」と銀行に脅され、泣く泣く信用力の低い利用者も審査を通しました。
こうして本来厳しかったはずの銀行カードローンの審査は、消費者金融に較べても甘い状態になりました。そして、気づけば総量規制対象外を良いことに、高額貸付けが行われていたこともあったのです。そうなれば、結果、融資は焦げ付いてしまいます。ただ銀行の場合、焦げ付いた融資額は保証会社が保障するため、痛みを伴っていなかったのです。これでは、好きなように貸してしまいます。
金利低下による銀行の収益力低下
銀行がこれだけカードローンに前のめりになった背景には、2013年から始まった日銀による「量的・質的金融緩和」(いわゆる異次元緩和)があります。景気の拡大を目的とした低金利政策により、住宅ローンの金利は固定金利1%前後、変動金利は0.5%前後と大幅に低下し現在も低金利が続いています。
銀行にとってローン貸付金の利息は、大切な収益源です。金利が下がるということはその分利息も減り、銀行の収益力を大きく下げることになってしまいました。
しかし収益を確保するために、カードローンの金利はほとんど下げませんでした。金利1%前後の低金利な住宅ローンに対し、カードローンの上限金利平均値は14%程度です。
収益低下に苦しむ銀行にとってカードローンは貴重な収益源となりました。銀行はカードローンを推進し、過剰な貸付をしていたと考えれます。
銀行の中でも特に地銀は、将来の生き残りのために収益力を向上させるよう金融庁から圧力を受けていました。これも銀行カードローンの過度な貸付を、駆り立てた要因のひとつです。利ざやによる収益が得づらくなっている地銀は、メガバンク以上に収益の確保が厳しい状況に置かれていたため、収益を向上させるためにカードローンに一層前のめりになりました。
銀行カードローンの審査が甘い?
銀行カードローン問題の本質は、返済能力に乏しいと思われる人への融資が急拡大したことです。住宅ローンなど各種のローン審査に厳しい銀行は、当然カードローンにおいても審査は厳しいと思われていました。
しかし実際のところは消費者金融の審査に落ちたのに、銀行カードローンの審査に通る人が続々といました。つまり審査が甘く返済能力が低いと思われる人にも貸し出し、利用者を取り込んでいたということです。
一部の銀行において、利用者年収の2分の1を超えるような過剰融資を行っていたという実態が発覚したのです。
債務整理や自己破産に追い込まれる人が続出
消費者金融の貸付が規制強化されたことで、過剰な貸付ができなくなったこともあり、自己破産者数はずっと減少していきました。しかし、2016年になると減り続けていた自己破産者数が13年ぶりに増加に転じ、翌年2017年も前年比6.4%増となってしまいました。
消費者金融の利用者が大幅に伸びた訳ではないのに、いったい何が原因だったのでしょうか?はっきりとした因果関係が分かっている訳ではありませんが、やり玉にあげられたのが銀行カードローンです。
銀行カードローンは単に貸出を増やすだけでなく、返済能力の怪しい人にまで融資を急拡大させていました。銀行カードローンが原因での自己破産者の数が、ハッキリ示された訳ではありませんが一つの要因にはなっています。
そして債務整理の相談を受ける現場の弁護士や有識者から、懸念の声が上がるようになりました。2016年12月頃から、盛んにマスコミでも取り上げられるようになりました。
先ほど述べた通り、銀行カードローンは単に貸出を増やすだけでなく、返済能力の怪しい人にまで融資を急拡大させていました。銀行カードローンが原因での自己破産者の数が、ハッキリ示された訳ではありませんが一つの要因にはなっています。
ただ、債務整理の相談を受ける現場の弁護士や有識者から、懸念の声が上がるようになりました。2016年12月頃から、盛んにマスコミでも取り上げられるようになり、2017年4月には、NHKの番組でも銀行カードローンのせいで債務整理に追い込まれた人が、急増している様子が取り上げられました
安心の象徴と見られる「銀行」で、サラ金まがいの融資が行われていたことを知って、世間から非難が殺到しました。当たり前です。
日本弁護士連合会が銀行カードローンに「待った」
せっかく消費者金融を総量規制で制限しても、銀行のカードローンに歯止めがなければ意味がなくなってしまいます。実際のところ、2015年には貸出総額で銀行カードローンが消費者金融を逆転しているのです。
銀行カードローンの急増もあり、それまで順調に減少していた自己破産の件数が増加に転じてしまいました。そして、自己破産手続き等に深く関係する日本弁護士連合会はこの状況を問題視します。
「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を総理大臣や全国銀行協会会長などに提出するに至りました。
全国銀行協会側もこの意見書を無視するわけにもいかず「銀行による消費者向け貸付に係る申し合わせ」を公表しました。
これは実質的な「銀行によるカードローンの自主規制」にあたります。
さらに全国銀行協会は銀行カードローンの実態調査のために、全銀行にアンケートを実施しました。カードローンを取り扱っている全国123行すべてから回答がありました。「総量規制対象外」表記がほとんどの銀行取りやめとなっているなど、自主規制が効いていることが判明しています。
その他項目でも「現在見直し検討中」との回答を寄せた銀行も多く、今後も自主規制が進むのは間違いなさそうです。
銀行カードローン自主規制の具体的内容
全国銀行協会の銀行カードローン自主規制の内容を以下の表に簡単にまとめました。
自主規制の項目 | ワンポイント解説 |
---|---|
1. 配慮にかけた広告・宣伝をおさえる | ・過剰な借入とならないように「総量規制対象外・年収証明書不要」など、配慮にかけた表示を行わない |
2. 消費者向け金融の健全化に向けた審査体制などの整備 | ・収入証明書の提出基準の厳格化 (提出基準300万円超→50万円超など) ・信用情報を活用した返済能力の確認の徹底 ・信用保証会社とコミュニケーションを深め審査の適切性をチェックする ・貸出後も定期的に信用状況のチェックに努める |
自主規制内容のなかでとくに重要なポイントは以下の2点です
これらは消費者金融に適用される「改正貸金業法」の考えかたに沿った内容と言えるでしょう。
自主規制ですので法的な強制力はありません。しかし全国銀行協会の取り決めを無視することは、どの銀行もできないはずです。
きちんとこれらの自主規制が行われれば、過剰な貸付問題はある程度解決に向かうことが期待できるでしょう。
自主規制に伴う各銀行の取り組み
先ほど解説した銀行カードローン自主規制をふまえ、各銀行では以下のような取り組みを行っています。
- 「ご利用は計画的に、借り過ぎにご注意ください」といった言葉を広告などに含める
- TVCMの放映時間の見直し
- 「総量規制対象外」「年収証明書不要」などの表記を公式サイトなどから削除
- 「下限金利」「即日融資」などを過度に強調した広告の取りやめ
- 年収借入比率の見直し
- 信用保証会社との情報共有を強化
- 保証会社の審査に頼らない、独自の審査の実施
「年収証明書不要」や「即日融資」などの勧誘ができなくなることで、気軽に利用しようという方がある程度減ることでしょう。
また年収借入比率の見直しによって、消費者金融の総量規制のような厳しさが加わる可能性があります。
さらに保証会社に審査を丸投げせず、各銀行での審査も実施されるのが基本となる方向です
大きく変わった点としては、即日融資ができなくなっていることです。実際に、融資までの時間はどんなに早い銀行で申し込んだ日の翌営業日以降、概ね1週間以上は見ておいた方が良いでしょう。また、書類の提出も厳重に行われるようになりました。また、総量規制対象外とはいえ、独自に基準を設定し、上限金額は無理なく返済できる金額までと決めています。
銀行カードローンの規制によって利用者が受ける影響
銀行側からの勧誘が控えめになることから、「手軽に借り入れしよう」という気持ちにはならなくなるかもしれません。
また「年収借入比率」の見直しによって、以前よりも審査が厳しくなる銀行カードローンも出てきそうです。
総量規制が今後銀行カードローンに適用されるかは定かではありません。しかし総量規制に準じた「年収借入比率」を設定するカードローンが増えてくる可能性は大いにあるでしょう。
また全国銀行協会の自主規制とは別の規定も2018年1月より始まります。それは銀行がカードローンなどの消費者向け融資を行なう場合、あらかじめ警察庁のデータベースへの照会が義務付けられるというものです。
警察庁への情報照会の本来の目的は「反社会勢力」への資金供与を防ぐことです。ただしこの情報照会は「最短でも翌営業日回答」というのが重要なポイントとなります。
この照会の時間があるがために銀行カードローンの即日審査は不可能ということになるのです。
銀行にとっては反社会勢力の情報はありがたいものですが、時間がかかるのがネックとなります。
ここで自主規制によって利用者が大きく影響を受けるポイントをまとめると以下になります。
巡り巡って利用者が受ける影響として、反社会勢力への資金流入を防ぐために、警察庁のデータベースへの照会が義務付けられたことがあります。単純に審査だけなら、自行と自行の関連会社の保証会社のみで審査をするなら即日融資も可能だったかもしれませんが、警視庁のデータベースの回答に時間がかかるために、融資までの時間がかかるようになってしまいました。これは、銀行という極めて公共性の高い金融機関であるがゆえの影響であると言えます。
自主規制があるから銀行カードローンはおすすめできない?
銀行カードローンを優先した方が良い方 | 消費者金融カードローンを優先したほうが良い方 |
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・融資を受けるまでに翌日~数日程度待てる方 ・まとまった金額を長い期間借りたい方 (銀行のほうが低金利なため) ・コンビニなどのATMを無料で利用したい方 ・近い将来、住宅ローンを借りる予定がある方 (消費者金融利用履歴は審査に影響大) | ・なるべく早く(即日)融資を受けたい方 ・数日~3ヶ月程度の短期間だけ借りたい方 (無利息期間を活用) ・審査通過を優先したい方 |
以上のポイントを見ていただけば、あなたがどちらを選ぶべきかはケースバイケースであることがお分かりいただけるでしょう。
「一刻を争うような短期決戦」の場合は消費者金融を選ぶのがおすすめです。それに対し「急がないが、まとまった金額をじっくり返済したい」場合は銀行カードローンを選択するのが基本となります。
これほど様々な規制があることには、銀行カードローンはやめておこうかと考える方も多いかもしれません。
しかしすべての方が銀行カードローンを利用しにくくなるという訳ではありません。
たとえば自主規制があったとしても、銀行カードローンの方が低金利であるのは変わらないのです。
またコンビニATMなどの利用無料の特典も、銀行カードローンのほうが有利なことが多いです。
自主規制後に銀行カードローンと消費者金融カードローンのどちらを優先した方が良いのでしょうか?こちらでチェックポイントをまとめて確認しましょう。
こちらの記事では銀行カードローンの自主規制を中心に解説しました。最後にもう一度重要なポイントを振り返っておきましょう。
- 2017年春頃から銀行カードローン貸し過ぎ問題がクローズアップされる
- 全国銀行協会が銀行カードローンの自主規制案を公表
- 2018年1月から銀行の即日審査・即日融資が不可能に
- 年収証明書の提出基準や年収借入比率等の審査基準見直しが進行中
- 保証会社に頼らない銀行独自の審査が強化される傾向
- 自主規制があるからと言って、必ずしも消費者金融がおすすめとは限らない
銀行カードローンの自主規制によって、大きく銀行カードローンが変化しつつあることを感じていただけたのではないでしょうか。
ただ、自主規制があるからといって銀行カードローンの魅力がなくなってしまったわけではありません。
自主規制後であっても銀行カードローンを利用したほうが良いケースもあります。あせらずにじっくりと、あなたにピッタリのカードローンを選ぶようにしてください。
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